薬剤師コラム
夏場に気を付けたい食中毒について
食中毒を引き起こす主な原因として【細菌】と【ウイルス】があり、高温多湿な季節になると細菌による食中毒が増加する傾向にあります。
これからの時期に気を付けたい食中毒についてご紹介します。
カンピロバクター属菌
カンピロバクターは、ニワトリ、ウシ等の家畜をはじめ、ペット、野鳥、野生動物など多くの動物が保菌しており、腸内で増殖する事が知られています。
多くの場合鶏肉の加熱不足によって起こります。食中毒の中で最も多い細菌感染症です。
潜伏期間:2日~7日 主な症状:発熱、嘔吐、腹痛、下痢
サルモネラ菌
サルモネラ菌は鶏卵や食肉、川や下水など幅広く生息している菌で、感染経路の多くは生卵です。賞味期限の切れた生卵は特に注意が必要です。
サルモネラに感染した場合3~4日で自然治癒する事が多いですが、小さいお子さんや高齢者、免疫力が低下した方などでは重症化する場合もあります。
潜伏期間:数時間~3日 主な症状:発熱、嘔吐、腹痛、下痢
ウェルシュ菌
ウェルシュ菌は、土壌、河川、下水、海、ヒトや動物の腸内に存在する菌で、自然界に幅広く生息しています。
カレーや煮込み料理等、大きな鍋で調理したものを作り置く事で増殖して感染する事例が多いです。一度芽胞というものを形成してしまうと、加熱しても死滅しにくく、酸素のない所でも増殖してしまうのが特徴です。
潜伏期間:6時間~18時間 主な症状:下痢、腹痛
黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌は人の皮膚に普段から存在している常在菌であり、これが食品中で繁殖して毒素を作り出すことが原因で症状を引き起こします。おにぎりやサンドイッチといったような手づかみで調理するものが原因となりやすいです。
また、熱に強く加熱しても死滅しにくいのが特徴です。
産生する毒素が悪さをするので、抗生剤が効かないという特徴もあります。
潜伏期間:食後30分~6時間 主な症状:嘔吐、腹痛、下痢
アニサキス
アニサキスは寄生虫の一種でサバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類の内臓に寄生し、鮮度が落ちると筋肉に移動していきます。寄生している生鮮魚介類を生で食べることで、 アニサキス幼虫が胃壁や腸壁に刺入して食中毒(アニサキス症)を引き起こします。
アニサキスは肉眼でも確認できます。見つけたら必ず除去しましょう。
潜伏期間:1時間~10時間 主な症状:激しい腹痛、嘔吐、蕁麻疹
食中毒予防の三原則
家庭で食中毒を予防するためには、食品を購入してから、調理して、食べるまでの過程で、食中毒の原因となる食中毒菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」という食中毒予防の3原則を実践することが大切です。
つけない
手指にはさまざまな雑菌が付着しています。食中毒の原因菌やウイルスを食べ物に付けないように食品を扱う際は必ず手を洗いましょう。
また、生肉や魚などから加熱しないで食べる野菜などへ細菌が付着しないように注意しましょう。
増やさない
食べ物に付着した細菌を増やさないために低温で保存することが重要です。肉や魚などの生鮮食品やお総菜などは、購入後、できるだけ早く冷蔵庫に入れましょう。
やっつける
多くの細菌やウイルスは加熱によって死滅します。中心部を75°Cで1分以上加熱することが目安です。表面だけではなく中心まで十分に加熱しましょう。